2012年05月07日

【曲目解説】川久保賜紀&上原彩子 デュオ・コンサート

2012年6月26日(火) 19:00 サントリーホールで行われる川久保賜紀&上原彩子 デュオ・コンサートの曲目解説です。

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 20世紀ロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフ(1891-1953)は、オペラや映画音楽を含むあらゆるジャンルに作品を残した多作家で、現代的感覚と叙情性が絶妙のバランスを見せる数々の人気曲は世界中で演奏されている。室内楽曲も少なくないが、今回演奏される3曲はいずれも、当初からその楽器のために書かれたオリジナル作品ではなく、作曲者自身が自作を編曲した作品である。楽器を変えてもその音楽が決して色あせることがないのは、すぐれたメロディ感覚と、誰をも夢中にさせるリズム感を持ち味とするプロコフィエフだからこその魅力といえるだろう。また自らすぐれたピアニストでもあったプロコフィエフの作品はどれも、きりりと引き締まったヴィヴィッドな演奏効果を存分に発揮するように書かれており、演奏家のテクニックと表現力を引き立たせる。名手の演奏でこそ聴きたい曲目だ。
 一方のリヒャルト・シュトラウス(1864-1949)は、リストやワーグナーの後継者として交響詩や楽劇の分野で名を馳せた後期ロマン派最後の大家。その作品のほとんどは巨大なオーケストラを駆使した作品である。彼が残した室内楽曲はわずかしかなく、しかもいずれも初期に書かれたいわば習作なので聴く機会は決して多くないが、今回演奏される<ヴァイオリン・ソナタ>はその中でもっとも高い完成度を誇る貴重な作品。シュトラウス自らがヴァイオリンをかなり弾きこなしたことから、高度な技巧を要求する作品となっており、また後年のゴージャスなオーケストラ作品の片鱗もうかがえる聴き応え十分の一曲となっている。

プロコフィエフ:5つのメロディ Op.35bis
 アメリカ亡命時代の1920年に<5つの歌詞のない歌>という歌曲として作曲したものを、5年後にプロコフィエフ自身がヴァイオリンとピアノのために編曲した作品。亡命時代の作品にはやや晦渋な作風のものが多いが、それぞれにアイデアを凝らした各曲には、ひらめきと感性の作曲家の本領が発揮されている。
 第1曲アンダンテ、第2曲レント・マ・ノン・トロッポ、第3曲アニマート・マ・ノン・アレグロ、第4曲アレグレット・レッジェーロ・エ・スケルツァンド、第5曲アンダンテ・ノン・トロッポ。

R. シュトラウス(1864-1949)
ヴァイオリン・ソナタ変ホ長調 Op.18
 リヒャルト・シュトラウス23歳の時に完成されたこの作曲家唯一の<ヴァイオリン・ソナタ>は、初期の古典的作風を締めくくる一曲と位置づけられ、その作風はブラームスを思わせる。また一方で、色彩感あふれる和声的など、シュトラウス特有の感性もすでにこの作品には表れており、この作品以後、彼が歌劇や交響詩のジャンルに表現の場を求めていった必然性を見いだすこともできる。曲は、堂々たる規模を誇る3楽章構成。ヴァイオリンの技巧は、たいていの協奏曲よりはるかに難しいといわれている。
 第1楽章アレグロ・マ・ノン・トロッポは、情熱的な楽想を中心に立体的に組み立てられた、規模の大きな、生気に満ちた楽章。
 第2楽章アンダンテ・カンタービレは<即興曲>と題され、官能的ともいえるその音楽は、全曲中きわめて印象的な部分を形づくる。
 第3楽章アンダンテ - アレグロは、緩やかな前奏ののち精力的な主部主題が現れ、熱のこもった音楽を展開する。

S.プロコフィエフ(1891-1953)
バレエ「シンデレラ」からの3つの小品 Op.95

 プロコフィエフのバレエ音楽は全部で8つあり、いずれも才気あふれるこの作曲家ならではの魅力に富んでいるが、後半の3曲、つまり<ロメオとジュリエット>、<石の花>、そしてこの<シンデレラ>は、プロコフィエフが1933年にソヴィエトに復帰した後の叙情的な作風がとりわけ新鮮な魅力となって、広く愛好されている。キーロフ歌劇場の委嘱により1940年に着手されたバレエ音楽<シンデレラ>は、第二次世界大戦中に<戦争ソナタ>やオペラ<戦争と平和>などの作曲によってたびたび作曲が中断されたこともあり、1945年にやっと全曲が完成した全3幕50曲からなる作品。プロコフィエフはバレエ音楽の完成に先立って、1942年から43年にかけて3つのピアノ編曲版の曲集を発表しているが、今回演奏される<3つの小品>Op.95はその一つである。すぐれたピアニストとして、独自のピアニズムを展開したプロコフィエフならではの硬質なロマンティシズムが、これらの編曲にも息づいている。
 第1曲「パヴァーヌ」、第2曲「ガヴォット」、第3曲「ワルツ・レント」。

S. プロコフィエフ(1891-1953)
ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ長調 Op.94bis

 プロコフィエフは2曲のヴァイオリン・ソナタを残しているが、この<第2番>は1942〜43年に作曲されたフルート・ソナタを1944年にヴァイオリン・ソナタに改作した作品。厳粛で内省的な性格をもち至難な技巧が要求される<第1番>とは対照的に、平明で簡潔な表現により、ロマン的な情緒が独特の魅力を生む音楽となっている。原曲のフルート・ソナタは、プロコフィエフが独ソ戦の混乱を避けてウラル地方の各地に疎開していた時に作曲した作品であり、その初演を聴いたダヴィド・オイストラフがヴァイオリン用に改作するよう勧めたのだった。1944年6月に、オイストラフとレフ・オボーリンによって初演されたこの<第2番>は、原曲のフルート・ソナタ以上に好評をもって迎えられ、現在に至っている。プロコフィエフ特有の硬質なリリシズムが、ヴァイオリンの旋律美を魅力的に際立たせる。
 第1楽章モデラートは、哀愁漂う第1主題と舞曲風の軽やかな第2主題によるソナタ形式。
 第2楽章プレストはスケルツォ楽章で、ドライでどこかシニカルな感じがいかにもプロコフィエフらしい。
 第3楽章アンダンテは、ロマンティックな美しさが際立つ楽章。
 第4楽章アレグロ・コン・ブリオは、行進曲風の堂々たる風格と躍動感に満ちたフィナーレ。

曲目解説:柿沼唯(作曲家)



上原彩子&川久保賜紀デュオ・リサイタル
10年の時を熟して奏でる友情のハーモニー
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2012年6月26日(火) 19時開演 サントリーホール

プロコフィエフ:5つのメロディ Op.35bis
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18
プロコフィエフ:バレエ「シンデレラ」からの3つの小品 Op.95 (ピアノ・ソロ)
プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ長調 Op.94

公演の詳細については


posted by Japan Arts at 11:14| 邦人アーティスト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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