2012年03月22日

ウィグモアホールでのデビューリサイタルで成功を収めたダニール・トリフォノフにインタビュー

4月にチャイコフスキー・コンクール優勝者ガラ・コンサートに出演するダニール・トリフォノフに電話インタビューをしました。
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Q:ウィグモアホールでのデビューリサイタルのご成功、おめでとうございます。すでにショパン・コンクールの前にカーネギーホールデビューを果たすなど、世界中の由緒あるコンサートホールで演奏なさっていますが、ウィグモアホールは特別だったと思います。
A:最高の音響で、素晴らしいホールでした。ステージ上で音がよく聞こえるので、自分で音をコントロールしやすかったです。今回もファツィオリのピアノを使いましたが、あのホールにもよく合っていたと思います。

Q:緊張なさいましたか?
A:
ロンドンはもちろん、世界の中でも重要なホールなので、多少は……。でも、ウィグモアホールの楽屋には、今までにこのホールで演奏した偉大なアーティストの写真がズラリと飾ってあるんですよ。ピアニスト、歌手、ヴァイオリニスト、その他の楽器奏者などなど……感動的でしたね。そしてホール自体がとてもポジティブなエネルギーを持っているのを感じました。ですから、演奏前は緊張するというよりワクワクしていました。

Q:日本でも披露してくださるショパンのエチュードが大絶賛をうけましたね。
以前インタビューで、「コンサートでは準備されたものを披露するのではなく、コミュニケーションによって生まれたものを届けること」とおっしゃっていましたが、演奏している時は、どのようなことを感じていらっしゃいましたか?
A:音に対する敏感さが大事だと思っています。自分が弾いている音を注意深く聴いて、音楽に完全に浸ること、言い換えると、演奏しているときは全てを忘れて催眠状態に入っているかのようになるのが目標です。現実から離れて完全に音楽に浸ることができれば、音楽にもスピリチュアルな側面が出てきます。その状態で弾けば弾くほど、自分が音楽に対してどんどんオープンになっていくのです。
聴衆の反応が初めからポジティブであればあるほど、そのような状態になるのは簡単です。そして、その状態の自分の音楽を聴衆が楽しんでくださっているのがわかると、本当に嬉しいですね。ですからコミュニケーションは一方通行ではなく、インタラクティブ(相互方向)なものなのです。
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Q:日本では、ショパンのピアノ協奏曲第1番も演奏してくださいますね。ショパン・コンクールに出場された時から、今、ショパンの作品に対する考え方など変化してことはありますか?
A:
ショパン・コンクール直前の1年間と直後は、本当にショパンばかり弾いていました。ショパンについて弾けば弾くほど、いろいろと試せば試すほど、演奏は変わっていくものです。もちろんその変化は一夜にして起こるものではありませんが、何度も練習したり、コンサートで弾いたり、また他のピアニストの素晴らしい録音を聴いて新たなインスピレーションを受けたりしながら、徐々に変わっていきます。練習ではただ同じことを繰り返すのではなく、いつも何か新しいことを探しながら弾いています。そうすることで、少しずつ解釈も変わっていくのです。また、新曲を弾くときは、まずは3週間ほどみっちり練習して、それから3週間は全くその曲には触らず、そしてまた弾いてみると新たな発見があったりします。
チャイコフスキー・コンクールで弾いたのを最後に、今シーズンショパンのピアノ協奏曲第1番は弾きませんでしたが、そうですね・・・この曲も毎回コンサートによって変わってきますね。会場、ピアノ、聴衆など、様々な条件で変わってくるのは当然ですが。僕のショパンがどう変わったかは、僕の演奏をずっと聴いてくれている他の人のほうがよく判るんじゃないでしょうか。僕自身も、本番中はどういう変化が起こっているか自覚していなくても、あとから録音を聴くとわかったりしますから。

Q:今まで、世界の多くのマエストロ(ゲルギエフ氏、メータ氏など)、素晴らしいオーケストラ(マリインスキー管、ウィーン・フィルなど)と共演なさっていますが、印象的だった共演はどのコンサートですか?それはなぜですか?
A:うーん、毎回が特別で独特だから、どれか一つは選べませんが……。今名前が挙がったゲルギエフ氏、メータ氏との演奏は確かに一番印象深かったかもしれません。
ゲルギエフ氏とは、今シーズンだけでもう12〜13回共演しています。チャイコフスキー協奏曲をマエストロのもとでウィーン・フィル、マリインスキー管、ロンドン響とともに演奏していますし、ゲルギエフ指揮マリインスキー管で録音もしています。この録音にはチャイコフスキー協奏曲のほかに、リスト編曲によるシューベルトとシューマンの歌曲、そしてリストのメフィストワルツ第1番も入っていて、今年の6月か7月にはリリース予定です。
ゲルギエフ氏とはもう何度も共演しているので、彼は僕の解釈を完全にわかってくれていますし、伴奏としてのオーケストラがどうあるべきかもよくご存じです。だから僕はものすごく自由に弾けるんです。解釈についてとても自由にさせてもらえる感じで、心地よいですね。
あと印象深いのはプレトニョフ氏ですね。去年の8月、ロシア・ナショナル管とチャイコフスキー協奏曲第1番を演奏しました。それからネヴィル・マリナー氏も。彼とは去年の秋、ポーランドのオーケストラとショパンの1番を弾いたのですが、とてもエキサイティングな演奏になりました。

Q:日本で一緒に共演するセルゲイ・ドガージン、ナレク・アフナジャリャンは、以前からの友だちだそうですが、3人で演奏したことはあるのでしょうか?リハーサルはどのように行うのですか?演奏で対話をしている感じですか?それとも、言葉で考えていることなどやりとりをするのですか?
A:ナレク・アフナジャリャンとはチャイコフスキー・コンクールで会ったのが最初ですから、まだ知り合ってそんなに長くないんですよ。コンクール入賞者のコンサートがパリであったときに共演しました。
セルゲイ・ドガージンは、僕が16歳のときに一緒にコンサートで演奏したのが最初です。彼は当時サンクトペテルブルグで、僕はモスクワで勉強中だったのですが、ロシアの財団が若い音楽家にアメリカでの勉強と演奏会を用意してくれる機会があり、セルゲイと僕がそれに合格して、アメリカで出会ったのです。ちなみにこの財団の奨学金を得て、僕はクリーブランドで勉強しています。
日本に行く前の3月末にワルシャワでコンサートがあって、そこで初めて3人で共演します。

Q:それぞれ、どのような人ですか?
A:ナレクは責任感が強いですし、それにユーモアセンスのいい、楽しい人ですよ。セルゲイは去年、日本でのチャイコフルキー・コンクール・ガラのときに一緒に来日しましたが、楽しいツアー仲間になりました。彼と一緒に演奏するのは久しぶりなので、楽しみです。
音楽的には二人ともとてもフレキシブルだし、リハーサルをしていてもお互いに理解しやすかったですね。リハーサルの仕方はレパートリーによります。例えばトリオなら全員が対等に意見を出し合って作っていきますが、デュオだとピアノが伴奏的役割になることが多いので、器楽奏者がどうしたいかを中心に考えるようにします。

Q:福岡で演奏されるラフマニノフ:ピアノトリオ第2番「悲しみの三重奏」は、チャイコフスキーが亡くなったことを知ったラフマニノフが作った作品だそうですね。日本ではあまり演奏されない作品ですが、なぜこの作品を選ばれたのですか?
A:ここのプログラムではチャイコフスキーのトリオも選択肢にあったのですが、この作品は室内楽曲の中でも非常にシリアスであり、深く感情に訴えかける曲で、こういうレパートリーを準備するのは自分にとって興味があったので選びました。日本ではあまり演奏されないとのことでしたし、僕もアメリカでまだ一度も演奏されるのを聴いたことがありません。だからこそ僕たちにとってはチャレンジでもあります。楽しみにしていていただきたいですし、僕たち自身もとても楽しみです。
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Q:日本にはショパン・コンクール・ガラ公演、続いてチャイコフスキー・コンクール・ガラ公演とリサイタルなど、昨年2回来日してくださいましたが、他の都市と比べて印象的だったことはありますか?
A:どこに行っても、人もホールも食べ物も素晴らしい!どんなアーティストにとっても、日本は一度来たら忘れられない大切な場所になると思います。街の印象ではなく聴衆の印象なのですが、日本人の音楽に対する姿勢は素晴らしいですね。コンサートではいつもとてもいい反応をしてくれて、それは僕たちアーティストにとって感動的ですらあります。彼らを見ていると、いかにクラシック音楽が日本人の方々にとって大切か、よくわかります。

Q:子どものころから時間がない・・・と思っていたとおっしゃっていましたが、今もその状態は変わらないのでしょうね。久しぶりにモスクワに帰られて、何をする予定ですか?
A:一昨日モスクワに戻ってきましたが、明日また一連のコンサートに向けて出発します。これからスイス、フランス、ポーランドです。それが終わったら、クリーブランドに行って少し勉強し、またすぐにモスクワに戻って「イースター・フェスティバル」に参加します。それが終わったら日本です。

Q:ずっと忙しいですが、自由な時間が欲しいとは思いませんか?
A:暇を見つけてはクリーブランドに戻るようにしています。あそこはじっくり勉強ができるし、いいピアノがあるので心置きなく練習できます。新曲を準備するときも、クリーブランドでするんですよ。最高の環境です。

お忙しいところ、ありがとうございました。
来日を楽しみにしています!

2012年3月18日/聞き手・翻訳:高島まき
 Photo by 青柳 聡


第14回チャイコフスキー国際コンクール優勝者ガラ・コンサート

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ダニール・トリフォノフ 【グランプリ、ピアノ部門第1位、聴衆賞】
セルゲイ・ドガージン 【ヴァイオリン部門最高位(1位なし)、聴衆賞】
ナレク・アフナジャリャン 【チェロ部門第1位、聴衆賞】

アンドレイ・ヤコヴレフ(指揮)【4/27出演】
モスクワ交響楽団【4/27出演】

詳しい公演情報はこちらから

posted by Japan Arts at 14:24| ダニール・トリフォノフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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