チャイコフスキー・コンクールで見事グランプリを獲得したダニール・トリフォノフのインタビュー。
─チャイコフスキーコンクールグランプリ、おめでとうございます。
ありがとうございます。今回のコンクールは、ファイナリストはもちろん、2次までしか進めなかった方たちの中にもすばらしいピアニストがたくさんいましたから、そんな中でこの賞をいただけたのはとても光栄です。
─5月のルービンシュタインコンクール優勝からたった3週間後の挑戦でしたね。
ルービンシュタインの後は連日コンサートで、コンサート先からそのままモスクワ入りしたので少々辛かったです。
でも、チャイコフスキーコンクールは、ロシアの音楽家にとっては象徴的な存在であり、夢の舞台です。僕は、コンクールは20代前半までの若いうちに受けておいたほうがいいと思っていたので、最後に挑戦するものとしてぴったりだと思い、(昨年10月の)ショパンコンクールの後、思い立って応募することに決めました。
─地元モスクワでのコンクールというのは気分が違うものですか?
9歳から8年間学んだ街で演奏できたのは喜びでした。この場所には、たくさんの友人たちが暮らしていますし……休暇でいない人も多かったけど(笑)。ロシアの聴衆はとても批判的で、とくに地元の演奏家には高いものを要求しますから、彼らから受け入れてもらえたことは喜びです。
─本選で全員が演奏しなくてはならないチャイコフスキーのピアノ協奏曲において、オーケストラ、指揮者とのコンタクトはいかがでしたか?
その質問は、オーケストラの問題ではなく、ピアニストの能力がどうかと尋ねられているのと同じことです。ソリストがオーケストラに刺激を与え、良い演奏をしてもらえるようにできなくてはいけません。
この作品をオーケストラと演奏するのは、本選で2回目でした。演奏中は、自分の直観が示すものに従って、新しい音楽を創っていきます。練習したことの陳列であってはいけません。それまでにどれだけ演奏していようが、ステージでは新しい経験が始まるのです。
チャイコフスキーは一般的に、少々ロマンティックで軽い音楽と捉えられることもありますが、僕は、彼の作品、とくに晩年の小品から、優れた魂の流れや葛藤を感じます。
─モスクワとサンクトペテルブルクで行われたガラコンサートでは、ゲルギエフ氏の指揮でチャイコフスキーを演奏されましたね。
とても光栄でした。ゲルギエフ氏はあっという間に僕をとらえて、エネルギーを感じとりながら、柔軟に、共に進んでくれているようでした。オーケストラへの的確な指示を見ているだけでも、とても刺激を受けました。本当に信じられないくらい心地よかった。まるで、一つのドラマが創り上げられるようでした。
─優勝して、これからますます忙しくなりそうですね。
休んだり、勉強したりといった時間も大切なので、演奏会は慎重に選んでいこうと思います。日本には、この秋を含めてすでに来年もたくさん行く予定があるので、とても楽しみにしています!
インタビュー:高坂はるか(音楽ライター)
取材協力:フィンエアー
◆公演情報◆
2011年9月8日(木)19時開演 サントリーホール
オール・チャイコフスキー・プログラム
≪曲目≫
歌劇「エフゲニー・オネーギン」〜手紙の場面
エレーナ・グーセワ【声楽部門・女声 第3位・聴衆賞】
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
セルゲイ・ドガージン【ヴァイオリン部門第2位(1位なし)・聴衆賞】
ロココの主題による変奏曲 イ長調 作品33
ナレク・アフナジャリャン【チェロ部門第1位・聴衆賞】
ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23
ダニール・トリフォノフ【グランプリ・ピアノ部門第1位・聴衆賞】
指揮:高関健 管弦楽:東京交響楽団
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【急遽決定!】
ダニール・トリフォノフ ピアノ・リサイタル
2011年9月9日(金)19時開演 紀尾井ホール
ショパン: 舟歌 嬰へ長調 作品60
ショパン: 練習曲集 作品25
シューベルト / リスト:春のおもい / 水の上で歌う / ます / 魔王
シューマン / リスト: 献呈
パガニーニ / リスト:ラ・カンパネッラ
リスト: メフィスト・ワルツ第1番「村の居酒屋での踊り」
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