2010年09月21日

「ツィメルマンに聞く」(ツィメルマン&ハーゲン弦楽四重奏団の公演間近!)

 今や世界最高のソロ・ピアニストとして誰もが認めるクリスティアン・ツィメルマン。その彼が、このたびハーゲン弦楽四重奏団とともに室内楽だけを披露しに来日する。
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 「ここ数年来、バッハからシマノフスキー、ガーシュイン、ショパンと、日本でも活動内容の幅を広げてきました。日本で初めてとなる室内楽も、この試みの延長線上にあります。それに私は、そもそも“室内楽出身”なんですよ。私の父はピアニストだったのですが、戦後の困難な時期、ある工場で働いていました。従業員の中には元音楽家がたくさんいて、毎日、彼らと室内楽をするんですね。ある年のクリスマスに、私も鍵盤のついたクラリネットのお化けのような楽器をもらい、見よう見まねで一緒に吹いていたら、楽譜が読めるようになった。そうして、誰かが抜けると私が代奏する。チェロ、ヴィオラ、第1ヴァイオリンのパートだって吹きましたよ(笑)。学校時代も繰り返しやったのは室内楽で、ソロ活動を始めてからもやめたことはなく、今回の演目シューマンのピアノ五重奏曲などは、ロッケンハウス音楽祭をはじめ、さまざまな機会に演奏してきました」
 ショパン同様、今年生誕200年を迎えるシューマン。ツィメルマンにとって、どんな存在なのだろう?
 「シューマンは、刻苦の人、探求の人であり、最後には精神をも病みました。それが作品に表れていると思います。とくに終楽章ですね。解決策を探して、探して、結局見つからないというようなところがある。しかし、危険を賭してでも新しい音楽を書こうとしたのであって、彼は紛れもなく偉大な作曲家です。それにピアノ五重奏曲は、はちきれんばかりの喜びにあふれた素晴らしい作品ですよ。お客さんに喜んでもらうことを、私自身、一番大切にしていますからね。悲みをたたえた第2楽章にさえ、人を魅きつけるオーラがあります」
共演するハーゲン弦楽四重奏団も、クァルテットというフォーマットにおける、現代最高峰の面々だ。
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 「1981年、彼らがロッケンハウスの室内楽コンクールを受けにやって来たとき、私は審査員の一人だったのですが、満場一致で彼らに一等賞を与えました。当時は彼らも、まだこんな子供でね(笑)。それから30年後に初めて共演するんですよ!  まずイタリアで、そしてザルツブルク音楽祭で共演し、それから日本に来ます。そうして、シューマン・イヤーを祝い、昨年生誕100年を迎えたバツェヴィッチを祝うのです」
ハーゲンら4人によるヤナーチェクの弦楽四重奏曲第1番のあと、今回、ポーランドの作曲家・ヴァイオリニスト・ピアニスト、グラジナ・バツェヴィッチ(1909-69年)作曲のピアノ五重奏曲第1番(1952年)が演奏される。
 「私がポーランド出身だからということではないのです。シマノフスキー[注:彼もポーランドの作曲家]を弾いたときと同じで、優れた作品だから取り上げるのです。バツェヴィッチのピアノ五重奏曲には2曲あり、第2番のほうは、あるコンクール用に書かれたこともあり、非常に難しい。今回演奏する第1番は、深い悲劇性から民謡的要素まで、多彩な性格をもった、交響曲のような音楽ですよ。第2楽章など、ほんとうに美しい」
知られざる現代曲を古典的演目に混ぜて紹介する。そんな「戦略」にもみえるが?
 「魅力的な作品を、とにかく知りたいだけなんです。そうして見つけては、親しい村長さんに電話をする。『では明日、村の教会堂で弾いてくれ』と、こんなこともしばしばです。楽譜を見ながら部分だけを演奏し、集まったお客さんにお話しをする。いつか日本でもやってみたいですね。日本では私について“完璧主義者”のイメージがあるらしいのですが、こんど演奏の途中で弾くのを止めてみましょうかね(笑)。仕上がった演奏を披露するばかりが、演奏会でもないでしょう?」
 これからもどんなアイディアが飛び出してくるか。先の読めない、楽しみな人だ。

取材/文・舩木篤也



posted by Japan Arts at 15:09| クリスチャン・ツィメルマン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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