2009年09月25日

アレクサンドル・メルニコフにインタビュー

城所 孝吉(音楽評論・ベルリン在住)

 9月の初め、ベルリンでアレクサンドル・メルニコフにインタビューを試みた。待ち合わせた古レコード店に現われた彼は、Tシャツにウィンドブレーカーという気軽な格好。雄弁かつ真剣に質問に答える一方、時々少年のように優しい笑顔を見せる様子が印象的だった。

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― ベルリンにお住いだとは知りませんでした。どうしてここに住んでいらっしゃるんですか。
「ベルリンは、自然に暮らせる町です。ロンドンやパリのように、都心には金持ちしか住めないということもなく、ごく普通のライフ・スタイルが可能です。また、文化的に非常に発達している。人々の芸術に対する関心が町中に感じられ、それが変に硬直していない感じがします。もちろんモスクワにも家があり、そこにも頻繁に行っていますが」


― メルニコフさんは、正統的ロシアン・ピアニズムを継承される一方、フォルテピアノで演奏するなど、古楽演奏にも目を向けていらっしゃいます。
「今度ボンでベートーヴェンを弾く時には、友人のアンドレアス・シュタイアーの楽器で演奏します。今日、我々は過去の演奏のあり方について、非常に多くのことを知っています。そうした状況で、古楽器や歴史的演奏解釈の知識を演奏に反映させないことは、一種の努力不足だと思うのです。一方、そうした研究の成果をもってしても、我々は“モーツァルト時代の演奏はこうだった”とは断定できません。私が特定の曲目を古楽器で演奏するのは、それが“正しい”からではなく、その方が単によりよく、より美しく響くと思うからです」


― 聞くところによると、メルニコフさんは相当なあがり屋だとか。
「舞台に立つのは怖いですね。世の中には、ステージで演奏することが全然苦にならない人、それどころか進んで出てゆく人もいますが、私はダメです。実は楽屋では、“もう二度と演奏会はやりたくない”と思うほどなんです。自然に舞台に出て行ける人がすごいと思います」


― それはどうしてなんでしょうか。
「おそらく、ちゃんと弾かなければならないという責任感のせいですね。ムラヴィンスキーなども、舞台に出ることを非常に嫌がったそうです。自分をムラヴィンスキーと比べるわけではありませんが、彼も完璧な演奏をしなければならないプレッシャーを感じていたのではないでしょうか。ライヴ録音が嫌いなのも、同じ理由からです。スタジオで録音する時は、信頼できるプロデューサーのもとで納得するまで曲を磨き上げることができます。一番リラックスして演奏できるのは、実は家にいるときなんですけれどね」

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― しかし、ライヴで自分を追い込んだ時に、素晴らしい演奏ができることもありますよね。ひと息で弾いた時の気迫が録れるとも考えられますが。優れたテクニックをお持ちなので、本番は苦手というのは、ちょっと意外です。
「ライヴでスリリングなものが録れる、というのは、理論的には事実ですよね。でも本当にできるかなぁ……(苦笑)」


注目のリサイタルは10月26日(月)!
詳しい情報はこちらから


posted by Japan Arts at 11:10| アレクサンドル・メルニコフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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