2008年12月17日

キーシン、公演レポート(サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー)

常に進化を続け、21世紀の巨匠への道を歩むキーシン。
11月17日のルツェルンを皮切りに、キーシンのワールド・ツアーが始まりました。
ルツェルン、ジュネーブ、ルクセンブルグ、アムステルダム、ミラノと続いたリサイタルは各地で絶賛を浴び、 12月14日にはサンクトペテルブルグで、ユーリー・テミルカーノフ指揮 サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー と共演をしました。
その時の様子をサンクトペテルブルグ在住の大塚健夫さんがレポートしてくださいました。
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エフゲニー・キーシン、ユーリー・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー演奏会

12月に入り、ペテルブルグのネフスキー大通はクリスマスの飾りにおおわれ、いかにも年の瀬という雰囲気になってきた。14日日曜日19時の開演前、外気温は零下二度だがフィルハーモニー大ホールは立見席も含めて満員の熱気に包まれていた。
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70歳の誕生日を迎えたばかりのユーリー・テミルカノーフ指揮、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニーのコンサートにエフゲニー・キーシンが出演する。この日は今年で9回目を迎えるという12月の「芸術広場」冬の音楽祭の初日にもなっている。「芸術広場」というのはフィルハーモニーや、ミハイロフスキー劇場、ロシア美術館のある市中心部の一角の地名。
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曲目はブラームスのピアノ協奏曲第一番。冒頭のティンパニーの響きからオーケストラは抑え気味の渋い響き。第一楽章第二主題のピアノ・ソロ、キーシンは全体的なレガートの中で長いフレーズをじっくりとうたい上げてゆく。まさにロシア・ピアニズムの伝統であり、彼らのお家芸ともいえる。一方でブラームス特有の中声部の旋律もしっかりと聞かせてくれるのもキーシンならではの知的な演奏。

彼のピアノは骨太のしっかりした音色で、ただ綺麗なだけの音ではないし、またこの協奏曲の演奏でよく聴かれるオーケストラを相手にした力比べみたいなものでもない。ブラームスの複雑なフレーズをきちんと最後の消えゆく一音まで納得して聞かせてくれるのがブラームス・ファンにはなんとも嬉しい。

今回キーシンはかなり早めにペテルブルグ入りして入念なリハーサルをしたようだ。テミルカーノフも単独での指揮ときのような、殆どオケに任せてときどきパフォーマンスを見せるというという指揮ぶりとはうって違って、非常に細かいところまで指示を出していた。共演するペテルブルグ・フィルハーモニーはいつも天下一品の技術とフレキシブルな対応でソリストをサポートするが、今宵の演奏もまさにそのとおりであった。

二楽章のピアニシモのピアノ・ソロは、響きの美しさに加えてポリフォニックな音楽づくりに思わず引き込まれる。過ぎ去った日々を思い出すような哀愁のある旋律で木管がこれを支えてゆく。ファゴットのソリストは今年78歳になるムラヴィンスキー・レニングラード・フィル時代からの往年の名奏者オレク・タルィピン。終楽章のロンドは早めのテンポでグイグイとひっぱり、「青春ブラームス」の第二主題ではたっぷりと歌い、ああ天才少年キーシンも青春を回顧するような円熟の年代に入ったのかと筆者は勝手に考えていた。
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キーシンといえば少年キーシンのデビュー盤ともいえるショパンのコンチェルト(D.キタエンコ指揮)、そして今や伝説となった最晩年のカラヤン=BPOとのチャイコフスキーのシルベスター・コンサートでの共演をまず思い浮かべてしまい、彼がどんなブラームスを聴かせてくれるのかというのはとても楽しみであった。
豊かなロシア伝統のピアニズムをもって、きちんとコントロールの効いたスケールの大きなブラームスをうたいあげたキーシンの知的なロマンティシズムに、ふだん比較的おとなしいペテルブルグの聴衆も熱狂的なブラボーで応じた。
カーテン・コールは何度にもおよび、鳴りやまぬ拍手にこたえてショパンのノクターン嬰ニ長調作品27の2が演奏された。
(サンクト・ペテルブルグ 大塚健夫)

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キーシンのワールド・ツアーは、1月にはパリ、トゥールーズ、ミュンヘンで、その後アメリカ、台湾、香港、ソウルへと続き、4月上旬からは いよいよ日本でのツアーが始まります。
ご期待下さい!
日本公演の詳細はこちらから



posted by Japan Arts at 17:16| エフゲニー・キーシン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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