2008年11月17日

ルトスワフスキについてツィメルマンが語る講演会 そのA

ルトスワフスキについてツィメルマンが語る講演会の続きをお送りします!
公演会レポートその@はこちらから


疲れた様子も見せず、むしろ頬を紅潮させて熱心にツィメルマンは今回披露されるルトスワフスキのピアノ協奏曲についてピアノを弾きながら、細かく話してくれました。
PB074518.jpg

「1楽章には、まだ60年代のなごりがあります。ショパンを思わせるような古典的な響きとともに、偶然性の音楽が入っています。」とツィメルマン。
この“偶然性の音楽”について私たちは、何となく「アナーキー」「即興的なもの」という受け止め方をしていますが、実際は譜面にしっかりと規則が書かれているそうです。
そして、ツィメルマンは「皆さんと偶然性の音楽を演奏してみましょう」とにっこり。
客席を大きな2つのグループに分けました。その半分はオーケストラに、そして残り半分をソリスト群にみたてました。そのソリスト群をさらに、3つと4つのグループに分け、群の各グループには「言葉=音楽」を伝えます。(その言葉は、「トロ」(2文字)、「マグロ」(3文字)、「カンパチ」(4文字)、「ト(ウ)モロコシ」(5文字)など・・・)オーケストラ群には「車が猛スピードで走っている音」など、物事からイメージされるとどめなく続く音を発声するよう指定しました。
アクセントと音量は、ツィメルマンが指揮をして「複雑性の効果を維持しつつ、実際の演奏は単純にする」という“偶然性の音楽”を会場中の聴衆とともに大合唱&大演奏(!)したのでした。
PB074567.jpgオーケストラが偶然性の音楽を奏でているところに、それを中断するかのようにピアノが入り、またオーケストラ、それを中断するピアノ、またオーケストラ、ピアノというように続き、最後はそれらが累計的に重なりあっていって1楽章のクライマックスを迎えていきます。

続いて、2楽章は・・・これは「非常に恐ろしい楽章です」とツィメルマン。
「スコアの1ページ目だけで、テンポが8種類も出てくるのです。オーケストラは練習を嫌がることが常ですが、44小節目のところに来て、もっと練習しておくんだった、と後悔するのです!」と会場の爆笑を誘います。
ところで、ツィメルマンは、オーケストラとの練習については決して妥協しません。彼が必要とするリハーサル日数がきちんと確保されることが、ピアノ協奏曲を演奏する条件になっているほどなのです。今回の公演も通常では考えられないリハーサルが行われます。そういった意味でも、ツィメルマンがピアノ協奏曲を演奏する公演は非常に貴重なのです。

そして「3楽章」 …「この楽章は、作曲家の愛の告白、作曲家の意思表示、個人的な思いの吐露なのです」と力強く話すツィメルマン。この作品が作られた時期、時代は大きく変わっていました。東西を引き裂いていた鉄のカーテンが崩れ、東側の諸国が自由を求め大きく揺れうごいていた時代を大きく反映し、未来を予測できない時代における、ルトスワフスキの姿勢、人間としての姿勢がこの作品にすべて込められているのです。
そして非常に興味深いことに、ショパンのピアノ協奏曲第1番とルトスワフスキの作品とに共通する部分を、実際にピアノを弾きながら示してくれました。「緊張感あふれる楽想」「レチタティーボ的な作風」。ツィメルマンの演奏で聴くと、説得力があります。

最後に「4楽章」 …この楽章のおもしろいところは、ピアノがテーマを弾くことがない、ところなのだそう。いろいろな楽器が、さまざまな色彩を帯び、テーマとは気づくことのないテーマが次々と重層的に現れてきて、高揚し、緊張感を高め、最後に意思表明がなされます。
話を進めるごとに熱が入り、とても長い講演会になりましたが、ツィメルマンの情熱、そして何よりも「ルトスワフスキのピアノ協奏曲」という作品にとても興味を持ちました。
ルトスワフスキについて「バッハ、ベートーヴェン、ブラームス・・・という大きな流れに連なる人」と話していたツィメルマン。まだまだ日本ではあまり知られていない存在ですが、今回の講演で垣間見ることができたルトスワフスキの作品の素晴らしさを、実際に感じてみたいと思いました。
他にもいろいろな話題が続きそうな講演会でしたが、時間の都合もあり「また次回!」ということで終了いたしました。

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posted by Japan Arts at 18:12| クリスチャン・ツィメルマン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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