2008年11月10日

ルトスワフスキについてツィメルマンが語る講演会 その@

今年、世界初演から20周年を迎えるルトスワフスキのピアノ協奏曲を、世界各地で演奏しているクリスチャン・ツィメルマンが来日。
11月7日、明治学院大学でルトスワフスキについて語る講演会が開催されました。
(主催:明治学院大学/日本アルバン・ベルク協会)
時にはピアノを弾きながら、2時間30分にわたり行われた講演会の様子を2回に分けてご報告します。
モデレーターの岡部真一郎氏(明治学院大学教授)に紹介され、にこやかな表情で会場に入ってきたクリスチャン・ツィメルマン。
PB074491.jpg
多くのお客様が集まってくださったことへの感謝とともに発した言葉は、「皆さん、そもそも、現代音楽とは何でしょうか」という問題提起でした。
「私には“現代音楽”という音楽はありません。音楽は音楽であり、バッハが作った音楽も、今生きている作曲家が作った音楽も、人間の内なるものを表現したもの、内なる声、動きを伝ええたいと思い作られたものなのです。」
「そして、今回演奏するルトスワフスキの作品は、emotion(感情)というもの、聴衆とのemotionのやりとり、接点、伝え合いたいという心を強く感じるものです。ですから、今日このようにルトスワフスキの音楽をもっと知りたい、というお客様と、このように語り合えることを、とても嬉しい」と話してくれました。
「ルトスワフスキ氏自身が、自分を“現代作曲家”という言葉でくくらないで欲しいと言っていました。かつて、私は尊敬するルトスワフスキ氏に“もっと多くのピアノ作品を作曲して欲しい、そうすればあなたの作品だけで構成されたコンサートを行うことができるから・・・”とお願いしたことがあります。しかし、ルトスワフスキ氏は“そんなことはやめて欲しい。私の願いは、例えばバッハや、ブラームス、もしかしたらフランクなどの後に、そうそうルトスワフスキの作品も入れると良いね”というように、コンサートに加えて欲しい・・・と話していました」
PB074496.jpg今回日本でのコンサートは、後半にチャイコフスキーの「悲愴」(20日)、ベートーヴェンの「運命」(23日)が演奏されます。欧米でもこのように、いわゆる“普通”のクラシック音楽のコンサートで演奏される曲と一緒にルトスワフスキのピアノ協奏曲は、オーケストラの定期演奏会などで演奏されました。
私たちは「ルトスワフスキ」という名前を聞いただけで、難しいのではないか?判らないのではないか?と怖気づいてしまうのですが、ツィメルマンの音楽の本質的な部分を感じ、信じる姿勢に励まされ、この貴重な機会を逃したくないという思いを強くしました。
ところで、ツィメルマンがルトスワフスキ氏に初めて会ったのは1974年のこと、ツィメルマンがショパンコンクールで優勝する前のことだったそうです。その後再会し、ルトスワフスキがピアノ協奏曲の作曲を約束したのですが、そのころの作曲家にとって、ピアノ協奏曲を作曲する、ということは非常に難しい状況だったようです。というのも、60年代の作曲書法はどちらかというと知識が重要視されており、「そもそも、音楽は何のためにあるのか」という基本的なことが、どちらかというとないがしろにされていたとのこと。それはもしかしたら、今、私たちが現代音楽に対して持っている「難しいもの」という偏見にも似た思い込みの原因かもしれません。何か新しいものを作り出したい、新しい形で表現したいという気持ちが、「新しいもの・形」を模索することの方にばかり向いていた時代だったのかもしれません。
ルトスワフスキから「ピアノ協奏曲が出来上がりました・・・」と連絡を受けた時、ツィメルマンはすぐに、ルトスワフスキが滞在していたロンドンに飛んだそうです。「ホテルの部屋で譜面を1枚1枚ベットの上に並べながら、ルトスワフスキはその音楽を口で歌ってくれました・・・」と、その時の様子を思い浮かべながら話してくれました。
その時のことを話すツィメルマンは、感動が心に蘇ってきているよう・・・。
その話を聞いているだけでも、世界初演することへの期待と不安、そして緊張が伝わってきて、それは今回の演奏会への期待へと繋がっていきます。

次回は、ルトスワフスキ:ピアノ協奏曲について、ツィメルマンが詳しく話してくれた様子をご報告します。
講演会レポートAはこちらから
 
公演情報はこちらから



posted by Japan Arts at 15:45| クリスチャン・ツィメルマン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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